夏の終わりと婚活
夏の終わりと婚活

夏の終わりと婚活

公開日:2025.8.25

「やっとさー!」

「やっとやっと!」


カカンカカンカカンカカンという鉦(かね)の音を皮切りに

阿波踊りの連が目の前を通り過ぎていく

東京高円寺の阿波おどり


法被や浴衣姿の老若男女や鳴り物部隊が賑やかで艶やかだ

掛け声や鳴り物の音でものすごい大きな音のはずなのに


踊り手がスローモーションのように見え

音が遠くで鳴っているように聞こえている


自分だけ取り残されて時が止まったような不思議な錯覚が起きる

まるで映画のワンシーンのよう


夏が走馬灯のように駆け抜けているみたいだ


中腰の姿勢で躍り続ける男踊り

高さのある下駄をはいて手を上げて躍り続ける女踊り

3時間ほど躍り続ける


1年以上の並々ならぬ練習量なのはよくわかる


腰が痛くて自分なら長時間は耐えられないな

二の腕は細くなりそうだけど上げっぱなしで筋肉痛にならないのかな


と邪推な観客としては尊敬の念しかない


大勢で同じ拍を刻んでいるが踊り手の表情や手の高さは微妙に違う

ある者は挑むように

ある者は愉快そうに

またある者は何かを背負うように。


それでも全体は一つの流れを成して、夏の夕暮れ通りを押し進んでゆく。

個が際立ちながらも群像の一部である、その姿が妙に胸に迫る。


人もまた、そうなのかもしれない。


それぞれに異なる歩みをしながらも

誰かと肩を並べ

時にすれ違い

時を共有していくこともある

祭りの熱気の奥でふとそんなことを考えていた。


遠くで篠笛や太鼓の音が聞こえる。

「夏の終わりだ。」


季節が移ろうように、人の心もまた新しい景色を求める。


次の季節には、思いがけない出会いが待っているのかもしれない。

ほんの小さな歩みが、その景色へと連れていってくれる。


ひとりでいるどこかの誰かが

寄り添う誰かと

その季節を迎えることができるといいなと

職業柄切に思う。