金木犀の咲くころ、恋を思い出す
金木犀の咲くころ、恋を思い出す

金木犀の咲くころ、恋を思い出す

公開日:2025.10.26

今年は秋が慌ただしい。


夏が長くて一気に冷えたせいか

秋支度が間に合わず

金木犀の香りが例年より薄い気がする。


祖母の家の庭には毎年金木犀の花が咲き

何とも言えない甘い香りを放つのが好きだった。


初恋の彼の家にも金木犀の木があったという。


だから、金木犀の香りがすると甘酸っぱい思い出がよみがえる。



女友達が手伝ってくれて

校舎裏で二人の写真を撮ってくれた。


彼はそっと私の肩に手を添えたので、

心臓のバクバクした音が漏れやしないかと

ドキドキしていた。


そして学生服の第一ボタンをくれた。


手をつなぐことも無かったし

お互いの気持ちを口に出すこともできなかったけれど

きっとお互い同じ気持ちだったと思う。


あの時勇気を出して「好き」と言えていたら。

そう思う度に胸が痛む。


この後悔は長い間

私の中に巣をつくり

夜中にふと目が覚めることもあった。


そう 「ずっと彼が好きだった。」


 

風の噂で彼が結婚したと聞いても

別の男性と交際しても

なかなか吹っ切れることができなかった。


前を向こうとするたび、過去が静かに裾を引く。


そんな年月を繰り返していた。


恋をしたらその人だけに愛されたい。

だからこそ、自分が愛した人に愛されるのは奇跡に近いと思う。


35歳になってやっと気づいた。

人生は想像よりずっと長い。


このまま独りで一生を過ごすのって幸せだろうか?


振り向かない人を待っても仕方がない。

過去にとらわれず時計の針を進めようと思った。


その時、モノクロにしか見えていなかった誰かが

ふとやわらかな色を帯びて見えた。


のちの我が夫である。


金木犀の香りは、

過去を思い起させるけれど


“今の私”を優しく包んでもくれる。


あなたも心に小さな勇気を灯して、
誰かと新しい物語を紡いでいくのはどうでしょう?