婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?㉖ ~東京カレンダー風
婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?㉖ ~東京カレンダー風

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?㉖ ~東京カレンダー風

公開日:2025.11.8

36歳、早稲田大学卒

大手メーカー勤務 

スラッと背が高くロングヘア チナミの婚活日記


前回のアーカイブ

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?

翌日の昼下がり。
いつものカフェで待ち合わせた。


カップに注がれたアールグレイティーから立ちのぼる湯気が、
秋の陽射しにゆらゆらと揺れていた。


「FP(ファイナンシャルプランナー)面談、なかなか濃かったね。」
と佐々木さんが笑いながら言う。


「うん。
なんか人生設計ってずーんときちゃった。」

「ああいうの聞くと、
ちゃんと考えなきゃって気が引き締まるよ。」


その言葉にうなずきながら、
チナミはふとカップの底を見つめた。


ほんの少しだけ心が波打っていた。


『ちゃんと考える』


その響きになんとなく温度の差を感じていた。

FP(ファイナンシャルプランナー)面談で見た“未来の設計図”を、
彼はどう見ていたのだろう。


数字の羅列を見て
現実を積み上げようとするその姿に
頼もしさと同時に距離感を覚えた。


「そういえばさあ」
佐々木さんがカップを回しながら言った。


「将来の住む場所のこと、また少し考えてみたんだ。
やっぱり都心寄りがいいかなって。」


チナミは笑顔を作った。


「うん。」


その一言のあと、なぜか言葉が出てこなかった。


頭のどこかで、昨日のFP(ファイナンシャルプランナー)さんの声が

水上の波紋のように響いていた。


「価値観の共有が大切です。」


共有ってなんだろう


同じ地図を見ること?
同じペースで歩くこと?


あるいは

違う道を選びながらも
たどり着く場所が似ていること?


彼の話す声が目の前にいるのに遠くに聞こえていた。


「聞いてる?」



「あっ、うん、ごめん。

ぼんやりしてた。」


我に帰り、笑いながら誤魔化した。


心のどこかで小さなさざ波が音を立てていた。


昨日までは気づかなかった

気にならなかった音だ。


「違和感」


そう呼ぶにはあまりに小さいけれど
打ち消そうとするほど

静かに深く
胸の奥に沈んでいく音だった。


窓の外は黄色い銀杏並木が風にゆれていた。


陽射しが傾きはじめ
テーブルの上の影がゆっくりと伸びていく。


「この影みたいに
ふたりの時間も少しずつ形を変えていくのかな」


そう思った瞬間
胸の奥で何かがかすかにきしんだ。


けれどそれが痛みなのか
成長なのか
今はまだわからなかった。


これまでのアーカイブ

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?①

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?②

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?③

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?④

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?⑤

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも⑥

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも⑦

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも⑧

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも⑨

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?⑮

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婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?⑱

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?⑲

婚活日記 お見合いは続くよどこまでも?

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