切ない月夜 ~失恋を思い出す夜
もうすぐ中秋の名月
今年は9月10日らしい
この季節はハッとするほど月がきれいだ
月がきれいなほど切ない思い出がよみがえる
20代のとある月のきれいな夜だった
男友達から1本の電話
「あいつ結婚したって」
あいつとはもう何年も忘れられない私の初恋の彼のことである
声も出ず電話元で茫然としてしまったが
「いつなの?」と
精一杯声を振り絞って聞くと
「ごめん、半年前らしい。お前に言えなかったよ。」
私に事実を告げるのにとても迷っただろう友人を
「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」と私ははなじってしまった
20代の私には友人が私に伝えるかどうか何日も葛藤しただろうその優しさを
当時はどうしようもなく哀しくて受け入れることができなかった
電話を切った後、最後通牒を渡されてしまった私は
わんわん声を上げて泣いた泣いた
一人じゃ辛すぎた
近所に住んでいた女友達に電話して
「今日はひとりでいたら耐えられないから行っていい?」
とビールを抱えて夜な夜な自転車で友人宅に向かった
すでに泣きはらしてお決まりの土偶のように腫れた私の目をみて
「いくらでも泣いていいよ」と言ってくれた
「え~ん」と泣いても泣いてもどうにもならないのはわかっていても
ひたすら泣いた
床の間のある和モダンなアパートに住んでいた彼女のアパートの窓から見えた三日月が
やたら美しかった
三日月の先が刺さって消えてしまいたいと思ったけれど
しぶとく今もここにいる
ビービー泣いている私に同調したのか
彼女が飼っている鈴虫が美しい羽音を奏でていた
リーン リーン
私の「え~ん、わーん」とはえらい違い
不憫だと一緒に泣いてくれたのだろうか
どれだけ泣いただろうか
次の日は目の腫れがすごすぎて会社は休んだ
別に相手にしてもらえてないのに
まだ独身なら数%の望みがあるかもしれないと淡い期待
しかし、ついにどうしようもない決定打を放たれてしまった
手にいれたくてもどうしても手に入らない
あの時のどうしようもない哀しさを9月の月をみるとふと思い出す
恋の終わりはこの世が終わったかのように思う
失恋くらいでこの世は終わらないんだけれど
世界中から色が失われたような錯覚に陥る
婚活中は度合いは人それぞれでも振ったり、振られたり
失恋だって多い
だから婚活疲れもあるし
死ぬほど哀しかったりもする
諦めなかったら手繰り寄せる糸はきっとある
当時は悲しすぎて空が灰色にみえたけれど
今は青く見える
できれば失恋はしたくないけれど
つながっている糸が別にあったわけで
そんなことを思う月の夜
↓出会いはどこにあるかわからない
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