恋愛の免疫
恋愛の免疫

恋愛の免疫

公開日:2023.5.4

野球したこともないのにいきなりホームラン打てたとしたら奇跡としか言いようがない


幾度かバッターボックスに立ち

ヒットは打てなくても

アウトでも

塁に出たのか否かでは

雲泥の差がでる


ワクチン接種に賛否両論あるものの

ワクチンを打っていない夏にインフルエンザにかかったときは

高熱がでて関節が痛くて

寒気がして動けなかった

一方、ワクチンを打っている冬は

ちゃんと免疫ができているのか症状は軽くて済んだ


恋愛も同じで

甘かろうが

苦かろうが

結婚するまでにいくつか恋愛や交際はしておいて免疫つけた方がよいと思う


学生時代の先輩のジンさん


夏になると一本足の高下駄でカランカランと音を鳴らしながらキャンパスに現れる

理系で学者みたいな風貌の物知りなイケメン

いつも楽しく場を盛り上げてくれる人気者


ところが女性にはめっぽう弱い

恋はするものの「いい人」止まりでよく振られてしまう


「また振られたらしい」と失恋話は酒の肴になっていた


生誕1万日記念などして結局大学にはフルフル8年在籍


在学中に彼女はできなかった


そうこうして随分と時は流れジンさん50歳


ある日学生時代の仲間に一斉メールがきた

「彼女できたぞ~」


ジンさんの朗報に歓喜


さっそく学生時代の仲間を集めてお祝い会をすることに

もちろん彼女を連れてきてもらうことにした


お祝い会当日


ジンさんはひとりで現れた

「彼女は遅れてくるよ」

とのことだったので

彼女のことを根ほり葉ほり聞くことに


23才の彼女で写真もみせてもらったがめちゃくちゃかわいい

ふた回りも離れている女子を捕まえるなんてすごいと朗報に沸き立った


待っているのが暇なので

彼女のフルネームを聞いて

Facebookを検索するとヒット


ところがなぜか彼女が口に花火をくわえて火を吹いている写真



おや 大丈夫かな?

ヤンキー女子??


都内に一軒家のあるお坊ちゃまジンさんと合うのかな?


一同に不穏な空気が漂う


「どこで知り合った?」

と詰め寄ると


「よく通っているキャバクラだよ~」と恥ずかしそうに答えるジンさん


えええええええ


「よく仕事前に食事するよ」→それ同伴出勤でしょ?

「弟紹介されたし、一緒に飲んだよ」→ジンさんがごちそうおじさんだからでしょ?


どんどん怪しい


「彼女って証拠は?」とさらに詰め寄ると


「チュウしてくれたよ~」


おおおおと沸き立つ


「ほっぺにねっ」


えええええ


それはリップサービスと言う


疑似恋愛を利用した”営業”だと

その場にいた全員は思ったが

ジンさんは恋人だと信じて疑わなかった


そしてその日、彼女はLINE既読スルーで結局現れることは無かった



スワロフスキーで彼女の名前入りタバコケースを手作りしてあげたとか

新しいお店の面接に付き合ったとか後日談は耳にしたものの


いつしか彼女とは連絡がとれなくなり

在籍していたキャバクラからも消えて音信不通となったらしい

crop ethnic woman with mobile phone


キャバクラの女性と結婚したケースも少なくない



しかし、恋愛の免疫のなかったジンさんは

本気か営業かの区別ができなかったようだ


純粋な人だけにとても切ない


ジンさんは還暦を迎えようとしていまも独り


なんだか切ない恋のお話