おかしな入院生活③ ~結婚しておいてよかった
おかしな入院生活③ ~結婚しておいてよかった

おかしな入院生活③ ~結婚しておいてよかった

公開日:2024.3.17

黄色いスニーカーを履いて空を見上げる


あいにくの雨でも

アスファルトの濡れた匂いすら新鮮


片手に傘をさして

もう片方には赤いトランク


「あ~、自由に歩き回れるってこんなに幸せなのね」


一見するとただの旅行者


しかしホントの肩書は「退院患者」である



いままで点滴という相棒が四六時中そばにいた


私の命綱であるが

点滴がそばに張り付いていると

一人で着替えもできない


着替えやシャワーの際は一旦点滴を止めてチューブを途中で外してもらう


犯人が刑事と手錠につながれるってこんな感じかな

つい刑事ドラマの「相棒」を思い浮かべてしまう


私の相棒は杉下右京さんではなく点滴さん

出展元 毎日新聞Web

点滴スタンドを連れまわせば歩き回ることはできるが

手の届く範囲は狭く

回り道しないと反対側の物も自由に手に取ることができない

日常の何気ないことが本当に貴重だと気づく


だんだん抗生剤が効いてきて

絶食中で何も食べていないものの

お腹もすかずひたすら元気である


「相当痛かったはず」と

医師も友人にも聞かれるが

どれだけ鈍感なのか

期待に応えられず申し訳ないけど「激痛ではなかった」


お酒で痛みが麻痺したにしても

激痛ではなかったので発見が遅れて破裂していたんだけれど


じっとしていられない回遊魚気質の私は

早々に病室オフィスをしつらえた


オンライン会議はドタキャンもせずなんなくこなした


背景をたまに病室にすると

相手がびっくりして驚くのがいたずら心に火をつける

zoom背景がリアル病室 


看護師や医師に叱られるかと思ったら

私がぴんぴんしているせいか

「おお、いま流行のコワーキングスペースみたいだね。」

と止められることもなかった


オンライン会議の途中

しばしば

「点滴かえま~す」

「検温で~す」

「血圧はかりま~す」

と中断されるのもご愛敬



退屈することもなく

ワーケーションに1週間きたみたいな感じだった


22時には消灯

朝は6時に「お熱はかりま~す」の声で起床

規則正しい生活


外科は短期で退院することが多いようで

患者は短いサイクルで入れ替わる中

1週間もいたので看護師さんたちとはすっかり仲良し


仕事ばかりしている姿を目にするせいか

「社長」とあだ名で呼ばれていた


お気楽ご気楽入院生活が送れたのは

着替えや洗濯をしてくれた家族のおかげである



一方家族側の観点からも

日頃たいした家事をしない母親が功を奏して

家庭内家事オペレーションに支障をきたすこともなく

むしろうるさい人がいないので

娘は夜更かしできて楽しかったらしい


コロナ禍では一人でコロナにかかり

「このまま一人でいたらまずいと

結婚を意識し始めた」

と入会する人が増えた


一人暮らしだったら

気付かれず倒れてたかもしれないし

化粧も落とせないし

着替えもないし

入院生活の面白話も聞いてももらえないし


なにげない日常の幸せと

家族のいるありがたみ


結婚しようがしまいが個人の自由だけれども

いつまでも健康で

平穏無事な毎日とは

限らない


そんな時助けてくれるのは家族だ


私のように突然のハプニングにみまわれる前に

考えてみるのもいいかも